ゲロゲロ話

「お客さん、終点ですよ」
僕は、二人の駅員に起こされた…
「電車から降りなきゃ」と思ったか どうか定かではないが、
フラフラとした足取りで、階段を上って改札を通る。

その時点では、西船橋まで来てしまった事にまだ後悔すら抱けずにいた。
とりあえず思ってみた「どうしよう」と…困るはずである、いくら闇夜にまぎれるとはいえ、
上半身裸なのだから…

西船橋は、お世辞にも感じのよい町とは言いがたく、目に付くのは、
ラブホテルばかりだった。

とりあえず、自宅に電話をかけることにした。
tururururu♪
「今、どこ?」
そんな母の一言からはじまった電話で会話しているうちに、
私は泣き出してしまう。(;´_`;)
解決策が見出せないでいると、父が電話の後ろで、迎えに来てくれると言ったようだった。
電話が父と変わり、私は、居場所を伝えた。「ウォークマンもってんだろ?それでも聞いて待ってろ」
それは、怒った声ではなかった。


私はロータリーの人目と外灯を避けるように、でも そこが見られる路地へと入った。
ラブホの軒先で、ロータリーの向かいのネオンを見ながら、
「fly me to the moon」(くすっ)を聞いていて思った。
「私はこの景色を一生忘れないだろう」と。

しかも、10分ほどのテープだったので、何度も繰り返してこの曲が流れたのだった。

そのとき僕は、声を出してシクシク泣いていたのだろうか?
どこからとなく(ラブホテルの受付?)のおばさんが、氷の入ったグラス一杯の水を僕にくれた。
(この件があって以来、「年をとった女性はどうしようもない」というカントの意見は間違っていると僕は思うようになった。)
その水を飲み干し、財布に入っていた全ての小銭を入れて、コップはそこに置いておいた。
(そういえば、「ここ、置いておいてくれれば良いから。」って言われたのだったか?)



しばらくして、父が着替えと、手洗い用にペットボトルに水を詰めて持って来てくれた。
私は点検して、汚れていた、シャツとGパンを着替え、タクシー(父の乗ってきたやつ)に乗り込んだ。
西船橋東陽町の距離がわかる人は、少ないのかもしれないが、往復ともに、
高速道路を使ったといえば、その遠さが解ってもらえるか?
事情は、来るときに、話してあったのかもしれない、特に運転手から質問はされなかった。
「高速に乗りますか?」とか野球の話が父との間で交わされていた様な気がする。
2〜3万円(往復)で、家の下についた。
無言のままエレベーターに乗り込む父と子。
サイ「ありがとぉ」
父「きたねぇなぁ」

FIN

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